タクマーレンズのカビ取りに挑戦

タクマー55ミリF1.8は、 あらゆる意味で「レンズ修理入門」に最適なレンズだ。 昭和を代表する名機、アサヒペンタックスSPの標準レンズ として長期間製造されたため製造本数が非常に多く、 中古価格が手頃。なかでもカビが生えた レンズはジャンク扱いなので格安で手に入る。 さらに鏡筒設計が非常に合理的なので、 絞りやヘリコイドを分解することなく、 レンズだけを簡単に外すことが可能。 おまけに修理用工具も最小限で済む。
とにかくこのレンズは性能が高く、デジタルカメラとの相性も抜群だ。 なかでもAPSCサイズの一眼レフに組み合わせれば大口径中望遠レンズに早変わり。 数あるM42マウントレンズの中で、最高のコストパフォーマンスを誇っている。
ビフォー アフター
Before
 
After
 ■レンズを選ぶときの注意点
  • タクマーレンズにはいろいろな種類があるが、 「スーパータクマー」と「SMCタクマー」が作業がしやすい。
  • レンズを明るい方向へ向けて覗いてみて、カビの菌糸が蜘蛛の巣のように伸びている状態がベター。 カビが進行し、レンズ全体が曇っているものはキレイになりにくい。
  • レンズ側面にある絞りレバーをMに合わせる(SMCタクマーの場合はマウント面に ある小さなピンを押しながらレバーを動かす)。次に絞りリングを回し、 絞り羽根が正常に動くことを確認。動きが鈍くても構わないが、 絞ったときの絞りの形がいびつなものはNG。羽根の錆びも要チェックだ。
  • ヘリコイドが無限遠から至近距離まで動くことを確認。少しくらい引っかかりがあっても構わない。
  • フィルター取り付け部に凹みがないことが重要。歪みがあると飾りリングが外せない。
必要な工具
吸盤オープナー
丸足ステンオープナー
ロケットブロア
カメラドライバーセット
ヘリコイドグリス
クリーニングエージェント
※このほか、シェービングフォーム、ベンジン、鉛筆、ボロ布などが必要

レンズの分解
吸盤オープナーをレンズの銘板に押し当て反時計方向へ回す。
鏡筒とレンズユニットの間にある3本のネジ (写真のようにレンズを置いたとき手前に来るほう)をカメラドライバーで緩め、 フィルターリングを外す。
レンズユニットを固定している3本のネジを外す。 このときヘリコイドを至近距離にしておくと作業がしやすい。 これでレンズユニットがヘリコイドから外すことができる。
前玉だけにカビが生えている場合は レンズユニットを鏡筒から外す作業は不要。銘板を外した状態で レンズ固定リングを緩め1枚目のレンズだけを外せば良い。
丸足ステンオープナーのチップ先端を外側のリングの溝に合わせ反時計方向へ回す。 最初は力が要るが、いったん弛んでしまえば後は竹串や先端の削った割り箸などを 溝に引っ掛けて回せばOK。前群が鏡枠ご外れたら、次は内側のリングを緩めて前玉を外す。 後群も同様にして外す。
レンズユニットを分解した状態。 二枚目以降のレンズにカビが生えている場合は、さらにレンズを分解する。
レンズのカビ取り
レンズぺーパーにシェービングフォームを少量付けてレンズをクリーニング。台所用の中性洗剤も利用できる。 カビが落ちたらレンズを水洗いし、最後にクリーニングエージェントで拭き上げる。
指紋や汚れがレンズに付いていないか確認。ロケットブロアでホコリを拭き飛ばしながらレンズを鏡枠にはめ、 リングで固定する。
絞りとヘリコイドの洗浄 (問題がなければ、この工程は省いて構わない)
ベンジンを入れた適当な容器に絞りユニットを浸ける。絞り羽根を何回か動かし、 油や汚れが落ちたらベンジンをブロアーで吹き飛ばし自然乾燥させる。
鉛筆の芯をカッターで削り絞り羽根の上に落とす。絞りを何回か開閉させて芯の粉を羽根になじませる。 余分の粉をブロワーで吹き飛ばす。
ヘリコイドを鏡筒ごとベンジンに浸ける。 ヘリコイドを回し劣化したグリスを洗い落とす。
ベンジンが乾いたら、平たく削った竹串の先端に ヘリコイドグリスを付け鏡筒の隙間からヘリコイドにグリスを注す。 ヘリコイドを何回か回しグリスをなじませ、動きが悪ければ同じ作業を繰り返す。 グリスの注しすぎに注意すること。
組み立て
レンズユニットを鏡筒に組み込む。 このときユニット側の絞りレバーを、鏡筒側レバーの溝にきちんとセットする。
3本のネジでレンズユニットを仮止め。絞りリングをF16に合わせた状態で レンズ後側の自動絞りピンを指で押した状態でレンズユニットを左右に回す。 絞りが最小まで絞られる位置でネジを固定。絞りリングを開放にして 絞りが完全に開くことを確認し、フィルターリングと銘板を取り付ければ完成だ。
ネジ止めの裏ワザ
フィルターリングを固定するネジは奥まった場所にあるので作業がしにくい。 こんなときはドライバーの先端にコニシボンドG17など合成ゴム系の接着剤を少し付け ドライバーからネジが落ちないようにすると作業がしやすい。





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